連続折鶴             

 複数の折鶴を1枚の紙に切り込みを入れた連続状態のまま折り上げる連続折鶴(連鶴)は、江戸寛政期の魯縞庵義道なる僧侶の著である『千羽鶴折形』という書を嚆矢とし、現在多くの方々がその変化・発展した作品を発表していますが、私も、多数の鶴を連続させる「長寿祝い鶴」と、用紙の大きさ限定による小さなサイズと複雑さに対する挑戦を試みました。
 長寿祝い鶴は、還暦、古稀、喜寿、傘寿、米寿、卆寿、白寿、上寿、茶寿、皇寿をそれぞれの年齢数に因んで折ったものです。
参考『千羽鶴を折りましょう』 山形寛 (黎明書房)
 10羽連続の金字塔  正六角形用紙による3羽連続

                           

      長 寿 祝 い 鶴

 61羽連続(還暦の祝い)  70羽連続(古稀の祝い)
   
 今年古稀になった作者が、まず古稀70羽連続を仕上げ、その後「還暦」を作り10年前の「過去」を清算いたしました。
 8×8の用紙に大鶴1を中心に小鶴60が田の字にうまく並びますが、小鶴はすべてが翼同士で繋がっているわけではありません。
 70は中途半端な数字で、原作では大鶴(3×3)1を中心に小鶴69が8の字に並んでいるだけでしたので、中鶴(2×2)1を加えまた、写真では判りにくいのですが、小鶴2羽を大鶴の翼に乗せた形に修正、変化と難度を加えました。  (2006.1.13)
 77羽連続(喜寿の祝い)  80羽連続(傘寿の祝い)
   
 喜寿77連続は8×10の枡のうち、大鶴1に4枡を使って中央に置くことで、小鶴は羽で繋がっているきれいに整った配置になります。
 発泡スチロールに台紙をはって虫ピンなどで留めるとちょっとした贈り物になるでしょう。(2006.6.6)
 次は「傘寿80」になります。40ミリ角の小鶴を8×10の用紙で折ると、ほぼA4版のサイズになりますが、接続の関係で「還暦・古稀」よりも折りづらくなります。
   (2006.1.13)
 88羽連続(米寿の祝い)  90羽連続(卆寿の祝い)
   
 米寿は10×10の桝目のうち大鶴4に4枡ずつ、残り84枡が小鶴で、整った形になっています。なお、この祝い鶴シリーズでは、小鶴は40ミリ角の正方形で統一しています。  ( 2006.1.23 )  100枡を使い、大鶴3に12枡、残りのうち1枡を切り取ります。頂点が大鶴の逆三角形を中にした三つ鱗形になりますが配置にはかなり大きな場所が必要です。三角形の一辺は約75センチ。  (2006.1.30)
 99羽連続(白寿の祝い)  100羽連続(上寿の祝い)
   
  白寿は卆寿の大鶴の9枡分が小鶴になって増えただけのような同じ三つ鱗になりますが、元の図面も作り方も違っていて、8×13=104の枡を使い、5箇所を「重ね折り」※にして99にします。  10×10で整った形になります。用紙の関係で1羽36ミリ角の大きさになりました。 (2006.6.8)
 軸になる鶴は4点接続でここに力が加わるため折る場合に注意が必要です。
 ※「重ね折り」について
 「重ね折り」というのは、2枚を重ね合わせて1枚として折るもので、接着剤を一切使用しない連続折鶴においては紐の結び目のような役割をし、すでに創始者義道も用いている技法です。
 上段左のような一続きの両端を重ね合わせて折ることで輪になった形になります。これにより正方形の折り紙では折れない筈の上段右のような3羽の連鶴を折ることが可能になります。
 さらに下段のように、違った種類の紙を次々と連続させることも糊付け無しでできますが、技術的に煩わしい割りには、1枚の紙から沢山の連続した鶴を折るという感じが薄れて、逆効果のような気がしますが如何でしょうか。因みにこれは6箇所に重ね折があります。                      (2006.2.2)    
 白の連鶴に赤を交互に重ねる。白で連続しており赤鶴はすべて重ね折り  サヨナラ三角また来て四角   三角部分の1羽は重ね折り  同 左
  
 111羽連続(皇寿の祝い)  300羽連続
  この「皇寿」で長寿祝い鶴をすべて折り上げたことになります。(「茶寿」については下掲の「煩悩鶴」と兼用) いかに長寿国であっても現実に111歳を祝うことはめったにないでしょうが、おめでたいことについて欠けたものがあってはいけませんので、あえて作成しました。(2006.8.25)   この300連は想定外の作品で、ある文化祭のため急遽6日間で作り上げたものです。展開図の方は「皇寿」などと共に腹案としてあったものですが、作る予定はありませんでした。ただ図面としては、桝目18×18の正方形用紙に大鶴8羽を中央4と四隅に配してぴたりと収まっています。(2006.9.10)

                           



  煩悩即菩提百八連鶴曼荼羅(=茶寿)

 人間にある108の煩悩を鶴を折ることで一つずつ捨て去り菩提を得ようというわけです。煩悩には様々あって「貪、瞋、痴 慢、疑、悪見」の6種の大煩悩が更に小さく分かれます。6個の輪はその様を表します。周辺から、祈り願いを籠めて一つ一つを折っていくと最後に中央の四羽の大鶴部分に到達しますが、これは仏陀の説かれた「『四諦』というこの世の四つの真理」を会得する境地に到ったことを示します。
 かくして108の鶴を折り上げすべての煩悩の消え去った後に現れるのは、菩薩となった鶴達によって描かれる蓮華の花に象徴された世界、即ち、釈迦・阿弥陀・薬師・大日の4如来を中心に諸仏・飛天の群れ集う浄土の姿であり、これがことさらに曼荼羅を称する所以でもあります。   (2006.7.27)    


          

 
   
 菱鶴42連・12連・24連
「長寿祝い鶴」が連続数を中心とする連鶴であるのに対して、数よりは完成後の並んだ形の美しさを目的とする連鶴を創作し公開されているサイト《せぷ氏「せぷの屋根裏工房」》に出会い、そのうちの何点かを折らせていただきました。

左の連鶴は、正方形ではなく、正三角形2個からなる菱形によるもので、菱鶴というのはせぶ氏によりつけられたものです。
因みに菱鶴は、羽の長いタイプと、首長尾長タイプの2種類が作れますが、首長尾長の方は格好が良くないように思います。

 羽鶴折り a b  亀の子折り・雪の華折り
   
 10×10の桝目をすべて、4種類の正方形で何分割かして
繋げた連鶴です。 
 正方形と菱形の2種類を使った連鶴です。 (2006.1.23)


          



  おめでたい連続鶴亀

 連続折鶴の「子負い鶴」を変形させ連続鶴亀とした作品です。
鶴亀を別々に折って乗せただけのようですがもちろん1枚で折り、色違いのものはあらかじめ2色を貼り合せた紙1枚を、写真の中央のように裁断した用紙 ( ×部分は正方形の半分で亀の裏側に折り込み、鶴を亀の背中の穴から突き出させるのに必要な部分 ) を使用します。
  頭尾が鶴は対角線上、亀は辺の中央平行線上なので鶴亀同大の用紙だと鶴の方が大きすぎ(左下)、鶴の用紙を亀より小さく(右下の鶴は亀の3分の2、上四つは2分の1)すると、前者で鶴亀ほぼ同大、後者で鶴がやや小ぶりに出来て、安定感が出るようです。
 ただ鶴亀を色違いにすると、一枚の紙で作ったという効果が薄れるように思いますので、貼り合わせなら下の形がお勧めです。

  ※ ⇒亀(鶴亀)の折り方
 鶴亀の用紙を2色に色付けをして(左下)使用している人がいて、出来上がった鶴亀は各半分ずつの2色になります。左上がその完成品ですが、鶴は縦に亀は斜めに色分けされます。
 鶴亀とも縦に色分けするには中央下のように亀は辺と平行に色分けする必要があります。そしてこうすることにより鶴亀同じ側の半分を同色にする(上二つ)とか、互い違いの色にする(右二つ)とかが可能になります。
 左下用紙のように繋ぎの部分は無くても同じ結果に折れます。
 どちらも先に亀を折ってしまいますが、無い方は切れやすい鶴が絶えず邪魔になります。
 繋ぎが有る方は紙が余計に必要なのと二重になった部分が折りにくいのですが、鶴は比較的邪魔になりません。  

            
          

  挑戦その1  用紙を15センチ角以下の折り紙に限定した連続折鶴

 左の写真は、用紙の上限が決まっている中で沢山の鶴を連続させて折るとなれば、1羽あたりの面積は小さくなりますから、そのためまず1羽だけでどのくらい小さく折れるか試してみたものです。大きい順に20、15、13、12、10、9、8ミリ正方形用紙によったものです。紙質は雁皮紙、大は指だけで折りましたが、中はピンセット、小は割り箸に針を植え込んだもの2本を用具として使いました。
 ただし連鶴の場合、机の上に置いて折らずに宙に浮かして手に持ったままの状態で折りますからここまで小さくは出来ません。また接点は大小にかかわらず1乃至2ミリ程は必要なので、小さくなるほどその誤差の割合が大きくなり、当然ゆがみが大きく出てきます。


 最も基本的な1点・2点・3点接続の4羽連続。  切手は20×25ミリ。
 難度は高くはない。
 赤は比較的単純。
 黒は全部違うサイズ。
 2羽・3羽は2枚重ねて折る特殊な折り方。
 子鶴2羽を両翼に乗せた親鶴。子は腹で接続。  それぞれ子鶴を咥えた親鶴の4羽連続。  4羽の尾の集まった上に乗っている鶴。  親鶴4羽と8羽の子鶴の連続。やや難しくなる。
 親鶴4羽と子鶴16羽。
 意外と易しい。
 16羽を羽根と羽根で接続させたもの。  左の赤16羽と切り込みの入れ方が異なる。  16羽を嘴と尾とで接続させたもの。
 36羽の連続という根気だけの単純作業。  16羽連続の切り込みの
バリエーション。
 左に同じ16羽の連続。
 「青海波」という、四隅の4羽以外は4箇所で接続。
 親鶴1羽と子鶴56羽。
 小鶴は18.5ミリ平方大。
 親鶴の背中に4羽の子鶴がぶらさがっている。   親鶴の上に子鶴、
  子鶴の上に孫鶴。
 親子鶴。頭の上・背中・尾の先に子鶴が接続。
 緑は義道の「竜胆車」と言われるもの。  サイズが大きければ折るのは容易。  特別な重ね折りが使われている。  各3羽の尾の先端に翼の先を接続させてある。
 ※ 小さな連続折鶴再挑戦
  折鶴の単独1羽折りでは前掲のように8ミリ角のものが最小でしたし、連続折りでは1羽当り18.5ミリ角ののものが最小でした。
  そこで何十年ぶりかで記録更新をめざしたのですが、やはり目と指先が利かなくなっていて、まことにひどい出来でした。単独の方は最初から棄権し連続は最少の4羽だけにしました。一応左の白は1羽当り17ミリ角、右のピンクは15ミリ角です。いびつにゆがんで、かろうじて体裁を保っている程度ですがいかがでしょうか。合否の判定はおまかせいたします。
 ただしこのあたりになりますと、接点の1ミリは15センチの折り紙なら1センチに相当しますし、紙の厚さもかなり大きなゆがみのもとになりますことを、ご考慮くださってよろしく判定ください。                (2006.6.28)    


                         

  挑戦その2  難度の高いものを、さらに別の作り方と組み合わせた連続折鶴
       
           用紙は15センチ角に限定はしないが、最大鶴は75ミリ以下とする
        

 両翼と尾の先端に孫鶴を3羽乗せ4羽の子鶴と輪を作った親鶴。  子鶴を背負った親鶴の4羽連続。
 両翼に子鶴を乗せた親鶴の4羽連続。
 「両翼に孫鶴を乗せた子鶴」を背負い、さらに自分の両翼と尾に孫鶴を乗せた親鶴。
  大1羽 ・中1羽 ・小5羽
 「背中に孫鶴を乗せた子鶴」を両翼に乗せ、さらに自分の尾に孫鶴を乗せた親鶴。
 大1羽 ・中2羽 ・小3羽
 「両翼に孫鶴を乗せた子鶴」を両翼に乗せ、さらに頭と尾に孫鶴を乗せた親鶴。
  大1羽 ・中2羽 ・小6羽


   一枚の紙で折った連続千羽鶴のページ


 関心の深い方のために別ページに、幾つかの図面を掲載しました。


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